危険な天狗 〜medicine of Aya〜

第三話

 だだっ広い永遠亭で、なにやら忙しそうに作業をしている永琳。そんな様子に気づいたのか、鈴仙は永琳に訪ねる。
「お師匠様、何か急ぎの用事でも?」
「ええ、ちょっと」
「良ければ手伝いましょうか?」
 それを聞いて、永琳は口に手を当てて何かを考え始めた。
「そうね……だったらお言葉に甘えて、ちょっと頼んでもいいかしら?」
「ええ、何でもいってください」
 永琳は鈴仙の大きな耳に、こそこそと何かを伝えた。それを聞いた鈴仙は一瞬驚いたが、すぐに真面目な顔に戻った。
「わかりました。今すぐ、行ってきますね」
 と言うと、部屋をでて、駆けだして行った。その様子を目で追っていた永琳の視界に、永遠亭のお姫様、蓬莱山輝夜が入ってきた。
「ねえ永琳、今鈴仙がどこかへ走っていったみたいだけど……」
「私から、鈴仙に用事を頼んだだけですよ」
 それを聞いた輝夜は安堵の表情を浮かべた。
「そう。ならいいわ。血相を変えて走ってたから何かあるんじゃないかと思ったわ」
「重要ではないんですが、できれば失敗してほしくないことを頼みましたので。」
「ふうん。それより、あの薬をちょうだい」
「はい、あれですね」
 永琳は輝夜に薬を手渡した。輝夜はそれを受け取ると、すぐさま部屋を出た。
「永琳、私は寝るから部屋に入ってこないでね」
 という言葉だけを残して。
(睡眠薬……ねぇ)
 再び何かを考えていたが、すぐに元の作業に戻っていった永琳だった。

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